顔のクリニック金沢

COLUMN

コラム

下眼瞼形成術と術後の外反のリスクについて

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皮膚を切開する「経皮法」の下眼瞼形成術は、「ハムラ法」「切開ハムラ」などともよばれますが、のびてしまった皮膚を切除してたるみを改善させるための非常によい方法です。

一方で皮膚を切開することによる外反(がいはん)のリスクが皮膚を切らない「経結膜法」よりも高くなります。

下眼瞼形成術と外反のリスクについて解説します。

 

外反とは?

下まぶたが眼球から浮いてしまい、あかんべえの状態でもとにもどらないことを「外反(がいはん)」といいます。

くまを改善させる手術で生じる合併症のひとつです。

外反の程度にはわずかに浮いている程度から赤い結膜が完全に見えて目が乾燥する重度のものまでさまざまです。

 

 

 

外反のしやすさに影響する因子

くまを改善させる「下眼瞼形成術」のあとの生じる外反のしやすさにはいくつかの要因が影響しています。

①もともとのまぶたのゆるさ

下まぶたのゆるさがある場合は術後に外反しやすくなります。ゆるさのチェックをするには2つの方法があります。ひとつめは「ピンチテスト」といい、下まぶたの皮膚を指でつまんでかるく水平方向へ引いたときのまぶたと眼球の距離を測る方法です。8㎜以上眼球から離れる場合は外反のリスクが高いといわれています。

もうひとつは「スナップバックテスト」といい、下まぶたを下の方にあかんべえをするときのように引き下げ、指を離したときにもとの位置に戻るまでの時間をはかる方法です。瞬時にもとに戻れば問題ありませんが、手を離しても数秒浮いているようであれば外反のリスクが高いといえます。

 

②術式

外反リスクの高さは「経皮法」>「経結膜法」となっています。40代未満で経皮法が必要になることはまずありません。通常経皮法が必要になるのは50代以上でふくらみが大きく、皮膚の弛緩(たるみ)が目立つ例です。

外反リスクが高くても経皮法をおこなわざるを得ない場合は、外反予防の処置をおこなう必要があります。外反予防として一般におこなわれる方法は、「眼輪筋の吊り上げ固定」と目尻の靱帯をひきしめて固定する「lalteral canthopexy」の2つです。

 

③皮膚切除量

経皮法ではのびてあまった皮膚を切除することが一般的ですが、切除量が多すぎると外反のリスクが高くなります。ポイントは皮膚を取り過ぎないこと、皮膚が緊張なく縫合できる程度にとどめることです。

 

 

 

外反が生じたときの対応

①手術直後

手術直後に外反がみられることは時々あります。麻酔や手術による刺激で目のまわりの筋肉が弛緩してしまい、しっかりと目を閉じることができなくなっている場合には直後から外反がみられます。とくにもともとまぶたのゆるみがある例では生じやすくなります。指で戻すと眼球に接触するようであれば、テーピングをおこなうだけでも改善します。また、術後数日〜1週間程度でもとにもどることがほとんどです。

②術後1〜3か月

直後は外反がなかったのにしばらくしてから外反が生じてくることがあります。体の中の傷が収縮する「拘縮」が原因です。「拘縮」がもっとも強くなるのは1か月〜3か月頃です。この時期の外反は基本的に拘縮が改善するまで待ちますが、「トラニラスト」などの拘縮をはやく落ち着かせる内服薬を飲んでいただくこともあります。

③術後6か月以降

術後半年経過しても外反が残っている場合は、それ以上の改善は期待できません。目が乾く、違和感がある、見た目が気になるなどがあれば修正手術の適応になります。

 

 

 

外反の手術治療

①移動させた脂肪を戻す修正術

外反の原因として眼窩脂肪や眼窩隔膜を下の方に移動させるときに下まぶたが引っ張られてしまっていることがあります。とくに目尻側の脂肪や眼窩隔膜を強く下に固定すると生じやすいため、移動させた脂肪を剝離して少しゆるい位置で固定することで外反が改善することがあります。

 

②下まぶたのゆるみを改善させる修正術

もともと下まぶたがゆるい症例で、予防処置が適切におこなわれていなかった場合には「眼輪筋の吊り上げ固定」や、目尻の靱帯をひきしめて固定する「lalteral canthopexy」などを追加することで外反が改善することがあります。

 

③皮膚移植術

下まぶたの皮膚切除量が多すぎる場合には、上記①、②の修正をおこなっても外反が改善されません。上まぶたや耳の後ろから皮膚を移植することで皮膚のひきつれによる外反を改善させます。パッチ状の傷あとがのこりますが、上まぶたからの移植では皮膚の質感が似ているため傷あとは目立ちづらく、傷あとが気になる場合にはレーザーなどで傷あとをぼやかす処置を追加することが可能です。

 

 

【症例】外反リスクが高い症例の経皮法

60代の男性、ピンチテスト6㎜、スナップバックテスト0.5秒で下まぶたのゆるみがありましたが、ふくらみや皮膚のたるみがあり、経皮法の適応でした。

手術は「眼輪筋の吊り上げ固定」と目尻の靱帯をひきしめて固定する「lalteral canthopexy」をおこない、皮膚の切除量は緊張なく縫合できる最小限としました。

手術直後はわずかに目尻側がつり上がったようにみえますが、1か月目にはゆるんで元の位置に戻っています。最終的に目尻の形、下まぶたの位置は元に戻っており、経過中も外反は認めませんでした。

 

このように適切な予防処置をおこなっても、よりまぶたがゆるい症例では一時的な外反や拘縮による外反を認める場合もあります。

 

 

 

くま取り手術後の外反について

くま取り手術後の外反については、まずは担当医にご相談ください。

担当医から必要な対応を受けた上で半年以上経過しても改善しない場合には外科的治療が必要になることもあります。

当院では他院での治療後に生じた外反の治療相談や手術治療をお引き受けしています。手術を希望される場合には初回手術を担当した医師の紹介状や手術記録をご持参いただくと治療方針の決定がスムーズになりますので、可能であればご持参ください。

 

 

 

 

 

【費用について】

修正手術の内容によって費用は異なりますので、診察時にお見積をお受け取りください。

 

お問い合わせ・ご予約

TEL 076-239-0039

10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.

 

 

 

【執筆および担当医について】

上記の症例を担当、本コラムを執筆した形成外科医は十分な経験と知識を有するエキスパートにのみ与えられる日本専門医機構および各学会の専門医です。

《外科医》 山下明子

日本形成外科学会専門医

日本美容外科学会(JSAPS)専門医

米国形成外科学会 国際会員