【学術活動】多分割Le Fort I型
骨切り術の検討
●日本形成外科学会総会(一般演題)
【多分割Le Fort I型骨切り術の検討】
上あごの歯列弓がせますぎる(または広すぎる)ために通常のLe Fort (ルフォー)I型骨切り術だけでは良好なかみあわせが得られない症例に対して多分割Le Fort I型骨切りによる一期的側方拡大を行った。
背景
奥歯部分で上あごと下あごの横幅が合っていない場合3つの対処法がある。
①歯科矯正治療
②外科的口蓋急速拡大法 SARPE
③上顎多分割Le Fort I型骨切り術
このうち今回報告した《上顎多分割Le Fort I型骨切り術》は《骨格性下顎前突症》や《上顎前突症》、《開咬》などの顎変形症に伴う《上顎狭窄(上あごの横幅がせまい状態)》に対して行われる。
手術の方法
①まず通常通りの上顎のLe Fort I型骨切りを行う。
②Down fracture後、レシプロケーティングソーとオステオトームを用いて上顎切歯間(上あご中央)の骨切りを行う。
③次にバーを用いて片側もしくは両側の口蓋骨矢状骨切りを行った。
④上顎幅径の縮小例では、縮小量に応じた骨削除を行った。
⑤セパレータを用いて骨片の分割を行い、設定拡大値までの十分な受動を行った。
⑥分割骨片の固定は咬合スプリントと切歯間のプレーティングで行った。
症例
8例(全例で上下顎骨切り術をおこなった)
性別:女性6例、男性2例
年齢:20.5歳(16 – 29歳)
手術の詳細:
・上顎臼歯部の拡大 7例
・臼歯部の縮小 1例
・臼歯部幅径拡大量は -3㎜(狭くした) 〜 5㎜(広くした)
※全例で手術計画通りの術後臼歯部拡大縮小量および臼歯部の安定咬合位が得られた。
まとめ
今回臼歯部の拡大を行った7例はそれぞれ様々な顎変形を伴っていたが、術後は全例で安定した咬合位が得られた。また重度buccal crossbiteにより臼歯部接触がなかった1例に対して臼歯部幅径の縮小を行ったが、術後安定した咬合位が得られた。鼻道縮小による鼻閉は生じなかった。
●日本形成外科学会総会(ランチョンセミナー)
【顎顔面外科治療 現状と今後の可能性】 司会 山下昌信
・患者満足から導き出される顎顔面治療の要件
長崎大学 樫山和也先生
・形成外科における顎変形症治療の地平を広げる必要性ー咬合の治療という建前から顔貌全体の治療へのパラダイムシフトー
東京警察病院 渡辺頼勝先生
【症例】ルフォー骨切り術とダウンタイム
【上下顎骨切り術とは】
上下顎骨切り術(ルフォー+BSSO=両顎手術)とは、上顎骨と下顎骨を三次元的にいろいろな場所に動かすことで顔立ちの特徴を変える手術です。
たとえば顔全体を短くする、顔の曲がりを整える、口元の突出感を減らすなどの変化が可能です。
上下顎骨切り術の効果とそのダウンタイムについて症例写真を使って解説します。
【症例】
※この手術で改善したところ①
・顔が面長に見える
・あご先が左に曲がっている
※この手術で改善したところ②
・前歯の並びが傾いている(右が下がっている)
・ガミースマイル(笑うと上の歯肉が見える)
【手術内容】
・上顎ルフォー骨切り(傾斜調整、4㎜短縮)
・下顎のBSSO(=SSRO)骨切り
・オトガイ形成(中抜き・sliding、3.5㎜短縮)
手術は提携病院で入院し、全身麻酔でおこないます。
すべての骨切りは口の中から行い、ドレーン(血抜きの管)も口の中から出すため皮膚には傷ができません。
術前(左)と術後12カ月(右)です。
あご先の曲がりが解消され面長感もなくなり女性らしい柔らかな輪郭へと変化しています。
スマイルの変化です。ガミースマイルが解消して笑っても上の歯肉が見えなくなりました。上の歯の傾きも改善して理想的な歯の見え方となり、華やかでかつ落ち着きのある口元になりました。
《歯の見え方》の変化はこの手術で最も重要なポイントです。手術中に歯の見せ方をミリ単位で微調整しました。
※関連コラム:口元の基準 incisal show
本例では歯並びやかみ合わせに問題がなかったため、かみあわせを変えせずに手術を行っています。術後、歯に矯正装置をつけておこなう《歯科矯正治療》はおこなっていません(術前術後に提携矯正歯科でかみあわせのチェックのみ)。
ルフォー骨切りにより上あごを短縮しています(右側で4mm)。上あごの左右差を調整することで上の歯の見え方、前歯の傾き、顔の下半分の曲がりが修正されました。
オトガイ形成(中抜き、3.5㎜)によって下あごの長さも短くなっています。
骨格の縮小による皮膚のたるみをおさえるため、オトガイ(あご先)を少しだけ前方に移動(sliding)させています。
術前(左)と術後12カ月(右)の比較写真です。
【顔のクリニック金沢でおこなう上下顎骨切り術について】
・手術は提携病院で行います。
・手術は全身麻酔でおこないます。
・入院が必要です(4泊5日)。
・すべての骨切りは口の中から行い、ドレーン(血抜きの管)も口の中から出すため皮膚には傷ができません。
・術後6週間は柔らかい食事をとってください。
・術後6週間は激しい運動やあごへの圧迫、衝撃を避けてください。
・口の中を清潔に保つため食後はお渡しする含嗽薬でうがいをしてください。
※術後にアフターケアに必要なお薬、注意事項の説明用紙などをお渡ししています(手術費用に含まれます)。
【上下顎骨切り術のダウンタイムについて】
・腫れのピークは術後48時間です。
・腫れの程度には個人差がありますが、およそ2~4週で目立たない程度まで改善します。
・完全に腫れがひいて手術の結果がわかるのは術後6か月目です。
【担当医について】
この症例を担当した外科医、麻酔科医はともに十分な経験と知識を有するエキスパートにのみ与えられる日本専門医機構および各学会の専門医です。
《外科医》 山下昌信
日本形成外科学会専門医 日本美容外科学会(JSAPS)専門医
《麻酔科医》 日高康治
日本麻酔科学会専門医
【費用について】
【起こりうる合併症、リスク、副作用】
術中術後出血、術後感染、神経麻痺、後戻り、噛み合わせのずれ、ご自身の術後イメージと手術の結果が一致しないことがある、他
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.
※費用はすべて消費税込みで表示しています。
※厚生労働省のガイドラインに準拠して治療の詳しい内容、費用、合併症等を記載したうえで、術前・術後の写真を掲載しています。
※先天性疾患等の治療としておこなう場合には保険適用となることがあります。適用条件については医師の診断が必要であるためご相談ください。
口が閉じにくい4つの原因
口が閉じにくい、口元に力をいれないと閉じれないといった症状を《口唇閉鎖不全》といいます。
歯や骨格と唇などのボリュームが合っていないために唇を楽にとじることができない状態です。力を入れて口を閉じようとするとあごに梅干しのようなしわができたり、鼻の下がのびてしまうこともあります。
これらは無意識におこる現象で、“口元の力を抜く”といった方法では対処できないので、それぞれの原因に応じた治療を選ぶことが大切です。
口元が閉じにくくなる原因と治療法について説明します。
1、前歯がでている
前歯が出ていることで唇が閉じにくい出っ歯タイプ。装置をつけて歯ならびをなおす《歯科矯正》で口が閉じやすくなります。歯肉や骨格が前に出た口ゴボともいわれる《上下顎前突/じょうかがくぜんとつ》があれば歯科矯正だけでなく《上下顎骨切り術/両顎手術》のような骨格の治療が必要になることもあります。
2、小顎、あごが小さい
あごが小さい“小顔”は若々しく見えるのはメリットですが、小さすぎると皮膚や筋肉とのバランスが合わずに唇が閉じにくい原因となります。上下の前歯のすきまを下の唇でふさいでいたり、あごを前にだしてなんとかバランスをとっていることもあります。《オトガイ形成》《下顎枝矢状分割術/SSRO》《上下顎骨切り術/両顎手術》などで骨格を整えることで口が閉じやすくなるだけでなく、横顔のEライン、唇のCカールが整い、食べる・咬むといった機能まで改善します。
3、受け口、顎が長い
あごの骨が大きすぎる場合も唇が閉じにくくなります。《オトガイ形成》《Vライン形成》であご先の形を整えると口元が閉じやすくなります。かみあわせも合っていない《下顎前突/顎変形症》であれば《下顎枝矢状分割術/SSRO》や《上下顎骨切り術/両顎手術》で口元が閉じやすく、見た目や機能も改善します。
4、上あごが長い
笑うと上の歯肉が目立つ《ガミースマイル》なら上あごが長い可能性があります。上あごとは上の歯肉とその周囲にある骨のことです。上あごを縦方向に短くする《ルフォーⅠ型骨切り術》で歯肉を見えにくくし、口を閉じやすくすることができます。中顔面の余白や面長感も改善されます。
リラックスした口元が美しい表情のポイントです。