顔のクリニック金沢

COLUMN

コラム

口元の基準 incisal show

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今回は骨格、輪郭の治療で大切なポイントとなる《歯の見え方》と手術による変化について詳しく説明します。

 

incisal showとは》

輪郭の手術で上あごの位置を決めるポイントになる上の歯の見えかたのことを《incisal show(インサイザルショウ)》といいます。

 

《関連用語》

・incisal show at rest

唇の力を抜いたときに正面から見える前の中央にある歯《切歯》の量。

・incisal show at smile

大きく笑ったときに正面から見える前の中央にある歯《切歯》の量。

※いずれも適切な日本語訳は今のところありません。

 

 

 

輪郭手術と歯の見え方の変化

輪郭手術のうち、上あごの位置を変更する術式を《Le Fort (ルフォー)I(いち)型骨切り術》といいます。小顔を希望される方の中には《Le Fort I型骨切り術》で上あごを何㎜短くしてほしいとオーダーされることがあります。では、顔を1㎝小さくしたい場合は上顎を1㎝短くすればよいのでしょうか?

 

実は、上あごを短くする目安となるのが《incisal show》です。

 

力を抜いたときの歯の見え方《incisal show at rest》の理想値は男性では2mm、女性ではもう少し大きく4mmといわれています。この値が小さくなると唇の力を抜いた自然な状態でも歯が見えなくなり、男女ともに表情から若々しさが失われてしまいます。反対にこの値が大きい場合、特に男性では実年齢よりも若く見えすぎてしまいます。女性では歯がたくさん見えているほうが若々しく、エレガントさを演出してくれるのに対し、男性では歯が見えすぎるとやや軽く、あるいは幼く見えてしまう原因になるため注意が必要です。手術による上顎の短縮量はこの歯のみえかた《incisal show》を適正にするように決定します。

 

 

笑ったときの歯の見え方、《incisal show at smile》の適正値

笑ったときの歯のみえかたである《incisal show at smile》は、男女ともに歯が全部見える《full crown》が理想とされます。笑ったときの歯の見え方が大きくなりすぎると、歯肉が見えて目立つ《gummy smile(ガミースマイル)》とよばれる状態になり、その程度によっては個性の強い見た目となります。歯肉の見えすぎる《gummy smile》に対しても上顎を移動させる手術である《Le Fort I型骨切り術》による上顎の短縮が有効です。

 

 

笑うと歯肉がみえる《gummy smile》

では、安静時の歯の見え方が適正であるのに、笑ったときに歯肉が見えすぎる《gummy smile》があるときはどうすればよいのでしょうか? この場合の上顎短縮はあまりおすすめしません。軽度の《gummy smile》は許容するかあるいはボトックス治療などの切らない治療方法が第一選択となります。年齢をかさねると骨格が小さくなるために顔の皮膚軟部組織は多かれ少なかれたるんで下垂します。若々しさをできるだけ保つためには前歯の見え方、《incisal show》を考慮しない上顎の切りすぎは避けるのが無難です。

 

答え:多くの方にとって1cmは切りすぎです。

 

 

監修:顔のクリニック金沢、金沢医科大学形成外科 医師 山下 昌信