【学術活動】
『顎矯正治療を通して「顔」を考える:
軟部組織変化と整容性をめぐって』
第43回日本頭蓋顎顔面外科学会 参加報告
今回は慈恵医科大学形成外科学講座主催ということもあり、頭蓋顎顔面手術と耳鼻科や睡眠外科をつなぐ興味深いトピックが多く取り上げられていました。
●パネルディスカッション4
テーマ:最新の顎矯正治療 ー心地よい顔のバランスを求めてー
『顎矯正治療を通して「顔」を考える:軟部組織変化と整容性をめぐって』
内容:口元の軟部組織と骨格の関係、表情による歯の見え方、顔面非対称、鼻の変化、全体の調和といった面から最終的な整容性を得るために必要なポイントを考察しました。



●11月20日イブニングセミナー
『骨接合システムを通してみる頭蓋顔面外科手術の実際』
KLSマーチンジャパン株式会社共催
内容:骨切り手術におけるチタンプレートシステム、吸収性プレート(ソニックウェルド)、骨延長器によるさまざまな骨接合のテクニックを多くの動画とともに供覧しました。

【お知らせ】

12月に開催される日本ストライカー株式会社の
『形成外科医のための顎顔面セミナー』
講義、ディスカッションとワークショップ、受講生、講師との懇親会もあり。
セファロ解析やプランニングを系統的に学ぶよい機会です。
あと若干名参加可能とのことです。
※追記:12月はじめに参加締め切りとなりました。
顔の女性化手術
顔の女性化手術とは?

「顔の女性化手術」は「フェイシャルフェミナイゼーション/Facial feminization surgery (FFS)」ともよばれる、顔の特徴を女性らしく変化させる形成外科治療です。
「顔の女性化手術」の治療法は骨格の手術からフィラーの注入まで多岐にわたります。
女性らしい顔の特徴と「顔の女性化手術」でおこなわれる治療について説明します。
女性らしい顔の特徴

男性と比べた女性の顔の特徴は
・額がまるい
・頬骨が出すぎていない
・頬の丸みがふっくらしている
・鼻は高すぎない(わし鼻でない)
・鼻先はすこし上向き
・小鼻が小さい
・エラの角度が鈍角
・あご先が細い
・唇がふっくらしている
これらは計測などで統計学的にも男女で明らかな差がある形の違いです。目に関しては明らかな男女差はないものの、女性のほうが幅広めの二重幅を好まれる傾向があります。
《部位別》顔の女性化手術の方法
1.額
男性に比べると女性の額には丸みがあります。この丸みを形成するには「脂肪注入」もしくは「ヒアルロン酸注入」をおこないます。脂肪注入は定着すれば追加がいらないことがメリットですが、額は1回の手術で定着させられる量に限界があるため、ある程度丸みをしっかりとつくりたい場合は複数回の手術が必要になるのがデメリットです。ヒアルロン酸注入は時間がたつと吸収されることがデメリットですが、量や形の微調整がしやすい点はメリットといえます。
額の治療オプションとして生え際の位置を下げる「額縮小術」があります。個人差はありますが、生え際を下げることで面長感を解消し、女性らしい輪郭になります。おでこのしわ、まぶたの重さや眼瞼下垂も同時に解消する「前額リフト」にもなるため、エイジングケア効果も期待できる治療法です。
2.鼻

女性らしい鼻の特徴は3つ
・鼻は高すぎない(わし鼻でない)
・鼻先はすこし上向き
・小鼻が小さい
もとの鼻のかたちにもよりますが、わし鼻を削って高すぎる印象をやわらげたり、「鼻尖形成術」で鼻先の位置を微調整して下がりすぎていないかわいらしい形を形成する、「鼻翼縮小」で小鼻を小さくするなどの方法があります。
軽いわし鼻でも女性らしく美しい人がいるように、鼻の形はわずかな違いでも印象が大きく変わったり顔全体とのバランスできれいに見えたりします。思った通りにならなかった場合の修正は技術的にも費用的にも難しく合併症の発生率も高くなります。治療を受ける場合は担当医のセンスに任せるのではなく、シミュレーションなどでなりたい鼻のイメージを担当医としっかり共有することが大切なポイントです。
3.輪郭

女性らしい輪郭の特徴は4つ
・頬骨が出すぎていない
・頬の丸みがふっくらしている
・エラの角度が鈍角
・あご先が細い
頬骨の張りがめだつ場合には「頬骨形成術」で横方向や前方への張り出し感を解消しなめらかな卵形のフェイスラインにととのえます。
頬骨の下のへこみや、笑ったときの頬の丸みが足りないようなら「脂肪注入」や「ヒアルロン酸注入」でボリュームを加えることができます。
エラの角が90度に近く張り出しが目立って顔が大きく見えるようならエラを小さくする「下顎角形成術」が適応になります。顔の横幅を減らすなら表面の骨を削って横幅を減らす「外板削除」もよい方法です。
あご先は幅広く角ばっていると男性っぽく見えるため、あご先を小さく、きれいなV字型に整える「Vライン形成」が適しています。
4.唇

ふっくらしてほどよく厚みのある唇は女性らしさの特徴の一つです。唇をボリュームアップする方法には「脂肪注入」や「ヒアルロン酸注入」があります。脂肪注入は前述のとおり一旦定着すると追加が必要ないことが大きなメリットですが、唇の場合は注入後かなり腫れが目立つことがデメリットです。ヒアルロン酸はボリュームや形の微調整がしやすく腫れも目立ちにくい反面、吸収されてボリュームが減ってくるため形をキープしたい場合は定期的な注入が必要となることがデメリットです。
5.目

まぶたの形については特に男女で大きな違いはありませんが、男性に比べると女性の方が広い二重幅を好む傾向があります。また、二重幅の調整や、さかまつげの改善、たるみとりを受けることでイメージ通りのメイクがしやすくなるといった可能性もありますので気になる点があれば検討してもよいかもしれません。
まとめ

「顔の女性化手術」は骨格から注射まで顔全体の多岐にわたる手術を含みます。
女性らしい顔の特徴をふまえたうえで、自分にとってどの治療が効果的か、治療の組み合わせや治療の順序はどうしたらよいか、など担当医とよく相談されることをおすすめします。
顔のクリニック金沢ではすべての「顔の女性化手術」への対応が可能です。ご予約を希望される場合はお電話でのご連絡をお願いいたします。輪郭や鼻の治療についてのご相談は火曜日、土曜日のご予約をお願いいたします。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. 〜 18:00 p.m.
監修:顔のクリニック金沢、金沢医科大学形成外科 医師 山下 昌信
【学術活動】多分割Le Fort I型
骨切り術の検討


●日本形成外科学会総会(一般演題)
【多分割Le Fort I型骨切り術の検討】
上あごの歯列弓がせますぎる(または広すぎる)ために通常のLe Fort (ルフォー)I型骨切り術だけでは良好なかみあわせが得られない症例に対して多分割Le Fort I型骨切りによる一期的側方拡大を行った。
背景
奥歯部分で上あごと下あごの横幅が合っていない場合3つの対処法がある。
①歯科矯正治療
②外科的口蓋急速拡大法 SARPE
③上顎多分割Le Fort I型骨切り術
このうち今回報告した《上顎多分割Le Fort I型骨切り術》は《骨格性下顎前突症》や《上顎前突症》、《開咬》などの顎変形症に伴う《上顎狭窄(上あごの横幅がせまい状態)》に対して行われる。
手術の方法

①まず通常通りの上顎のLe Fort I型骨切りを行う。

②Down fracture後、レシプロケーティングソーとオステオトームを用いて上顎切歯間(上あご中央)の骨切りを行う。

③次にバーを用いて片側もしくは両側の口蓋骨矢状骨切りを行った。
④上顎幅径の縮小例では、縮小量に応じた骨削除を行った。
⑤セパレータを用いて骨片の分割を行い、設定拡大値までの十分な受動を行った。
⑥分割骨片の固定は咬合スプリントと切歯間のプレーティングで行った。
症例
8例(全例で上下顎骨切り術をおこなった)
性別:女性6例、男性2例
年齢:20.5歳(16 – 29歳)
手術の詳細:
・上顎臼歯部の拡大 7例
・臼歯部の縮小 1例
・臼歯部幅径拡大量は -3㎜(狭くした) 〜 5㎜(広くした)
※全例で手術計画通りの術後臼歯部拡大縮小量および臼歯部の安定咬合位が得られた。
まとめ
今回臼歯部の拡大を行った7例はそれぞれ様々な顎変形を伴っていたが、術後は全例で安定した咬合位が得られた。また重度buccal crossbiteにより臼歯部接触がなかった1例に対して臼歯部幅径の縮小を行ったが、術後安定した咬合位が得られた。鼻道縮小による鼻閉は生じなかった。
●日本形成外科学会総会(ランチョンセミナー)
【顎顔面外科治療 現状と今後の可能性】 司会 山下昌信

・患者満足から導き出される顎顔面治療の要件
長崎大学 樫山和也先生
・形成外科における顎変形症治療の地平を広げる必要性ー咬合の治療という建前から顔貌全体の治療へのパラダイムシフトー
東京警察病院 渡辺頼勝先生

監修:顔のクリニック金沢、金沢医科大学形成外科 医師 山下 昌信