顔の女性化手術
顔の女性化手術とは?

「顔の女性化手術」は「フェイシャルフェミナイゼーション/Facial feminization surgery (FFS)」ともよばれる、顔の特徴を女性らしく変化させる形成外科治療です。
「顔の女性化手術」の治療法は骨格の手術からフィラーの注入まで多岐にわたります。
女性らしい顔の特徴と「顔の女性化手術」でおこなわれる治療について説明します。
女性らしい顔の特徴

男性と比べた女性の顔の特徴は
・額がまるい
・頬骨が出すぎていない
・頬の丸みがふっくらしている
・鼻は高すぎない(わし鼻でない)
・鼻先はすこし上向き
・小鼻が小さい
・エラの角度が鈍角
・あご先が細い
・唇がふっくらしている
これらは計測などで統計学的にも男女で明らかな差がある形の違いです。目に関しては明らかな男女差はないものの、女性のほうが幅広めの二重幅を好まれる傾向があります。
《部位別》顔の女性化手術の方法
1.額
男性に比べると女性の額には丸みがあります。この丸みを形成するには「脂肪注入」もしくは「ヒアルロン酸注入」をおこないます。脂肪注入は定着すれば追加がいらないことがメリットですが、額は1回の手術で定着させられる量に限界があるため、ある程度丸みをしっかりとつくりたい場合は複数回の手術が必要になるのがデメリットです。ヒアルロン酸注入は時間がたつと吸収されることがデメリットですが、量や形の微調整がしやすい点はメリットといえます。
額の治療オプションとして生え際の位置を下げる「額縮小術」があります。個人差はありますが、生え際を下げることで面長感を解消し、女性らしい輪郭になります。おでこのしわ、まぶたの重さや眼瞼下垂も同時に解消する「前額リフト」にもなるため、エイジングケア効果も期待できる治療法です。
2.鼻

女性らしい鼻の特徴は3つ
・鼻は高すぎない(わし鼻でない)
・鼻先はすこし上向き
・小鼻が小さい
もとの鼻のかたちにもよりますが、わし鼻を削って高すぎる印象をやわらげたり、「鼻尖形成術」で鼻先の位置を微調整して下がりすぎていないかわいらしい形を形成する、「鼻翼縮小」で小鼻を小さくするなどの方法があります。
軽いわし鼻でも女性らしく美しい人がいるように、鼻の形はわずかな違いでも印象が大きく変わったり顔全体とのバランスできれいに見えたりします。思った通りにならなかった場合の修正は技術的にも費用的にも難しく合併症の発生率も高くなります。治療を受ける場合は担当医のセンスに任せるのではなく、シミュレーションなどでなりたい鼻のイメージを担当医としっかり共有することが大切なポイントです。
3.輪郭

女性らしい輪郭の特徴は4つ
・頬骨が出すぎていない
・頬の丸みがふっくらしている
・エラの角度が鈍角
・あご先が細い
頬骨の張りがめだつ場合には「頬骨形成術」で横方向や前方への張り出し感を解消しなめらかな卵形のフェイスラインにととのえます。
頬骨の下のへこみや、笑ったときの頬の丸みが足りないようなら「脂肪注入」や「ヒアルロン酸注入」でボリュームを加えることができます。
エラの角が90度に近く張り出しが目立って顔が大きく見えるようならエラを小さくする「下顎角形成術」が適応になります。顔の横幅を減らすなら表面の骨を削って横幅を減らす「外板削除」もよい方法です。
あご先は幅広く角ばっていると男性っぽく見えるため、あご先を小さく、きれいなV字型に整える「Vライン形成」が適しています。
4.唇

ふっくらしてほどよく厚みのある唇は女性らしさの特徴の一つです。唇をボリュームアップする方法には「脂肪注入」や「ヒアルロン酸注入」があります。脂肪注入は前述のとおり一旦定着すると追加が必要ないことが大きなメリットですが、唇の場合は注入後かなり腫れが目立つことがデメリットです。ヒアルロン酸はボリュームや形の微調整がしやすく腫れも目立ちにくい反面、吸収されてボリュームが減ってくるため形をキープしたい場合は定期的な注入が必要となることがデメリットです。
5.目

まぶたの形については特に男女で大きな違いはありませんが、男性に比べると女性の方が広い二重幅を好む傾向があります。また、二重幅の調整や、さかまつげの改善、たるみとりを受けることでイメージ通りのメイクがしやすくなるといった可能性もありますので気になる点があれば検討してもよいかもしれません。
まとめ

「顔の女性化手術」は骨格から注射まで顔全体の多岐にわたる手術を含みます。
女性らしい顔の特徴をふまえたうえで、自分にとってどの治療が効果的か、治療の組み合わせや治療の順序はどうしたらよいか、など担当医とよく相談されることをおすすめします。
顔のクリニック金沢ではすべての「顔の女性化手術」への対応が可能です。ご予約を希望される場合はお電話でのご連絡をお願いいたします。輪郭や鼻の治療についてのご相談は火曜日、土曜日のご予約をお願いいたします。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. 〜 18:00 p.m.
監修:顔のクリニック金沢、金沢医科大学形成外科 医師 山下 昌信
顔面神経麻痺後遺症ボトックス治療とリハビリテーション

□顔面神経麻痺の後遺症とは?
《ベル麻痺》《ハント症候群》などの《末梢性顔面神経麻痺》の回復期に生じるさまざまな不都合を顔面神経麻痺の後遺症といいます。
・発症から4か月~ 口と目が一緒に動くなどの病的共同運動
・8~10か月~ 顔のこわばり、ゆがみ、左右差
そのほか「ワニの涙」とよばれる食事などの時に涙が出る症状も後遺症のひとつです。

□ボトックス治療の目的
①共同運動の改善
表情筋の一部を一時的に動かないようにすることで、間違って再生した神経をブロックして共同運動を改善させます。
②顔のこわばり、ゆがみ、左右差の改善
縮まって硬くなった表情筋をゆるめてこわばりや非対称を改善させます。
□後遺症の治療時期と方法
発症から4か月以降で、後遺症の症状がある方がボトックスによる治療の対象となります。共同運動やこわばりがみられる表情筋に筋肉の動きを弱める注射をします。
顔の写真や症状の問診をもとに、治療のターゲットとする表情筋を選びます。眼輪筋、上唇鼻翼挙筋、大頬骨筋、小頬骨筋、口唇下制筋、口角下制筋などがおもに注射の対象となります。

□注射後のリハビリ
下記の内容でリハビリテーションをおこないます。自宅でできる内容となっているため、一日のうち何回でも、可能な限り多めにおこなっていただくようにお願いしています。トイレに行ったときに鏡をみながらおこなっていただくことをおすすめしています。

①表情筋のストレッチ、マッサージ
a. 目じりを横方向に引っ張る
b. 指先を頬の中央にあてて縦、横、円を描くように動かす
c. 口角を横方向に引っ張る
上記のa, b, cの動きをあわせて20秒程度おこなう。回数はできるだけ多く、こわばって縮まった表情筋を引き延ばすイメージで行う。
※麻痺していない側も一緒に行ってよい
※クリームなどをつけるとすべって表情筋を適切に引きのばすことができないため、肌が乾いた状態でおこなう
②眼輪筋のストレッチ:
額や眉を動かさないようにして、目の奥に力を入れて目を大きく開ける練習。目の周りの筋肉が伸ばされるのを感じる。
③ミラーバイオフィードバック:
鏡を見ながらゆっくりと口を動かす練習。このとき目が左右同じ大きさを保つように意識する。「ウー」「イー」「頬を膨らませる」の3つの動きをゆっくりとおこなう。
□効果の判定
注射の効果は半日程度から出始めて1週間目頃に最大となり、3-6か月続きます。注射の後1-2週目に治療前後の写真を使って効果を判定します。初回の反応をみて2回目以降の注射の量や位置を調整します。
□治療の費用
顔面神経麻痺後遺症に対するボツリヌストキシン注射は健康保険が適用されないため自由診療での治療となります。料金については料金表をご参照ください。
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10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.
【学術活動】顔面神経麻痺後遺症に対するボツリヌストキシンを用いたtotal facial balancing

【目的】ベル麻痺やハント症候群などの末梢性顔面神経麻痺による後遺症に対し、頚部を含めた顔面全体の静的、動的非対称を改善する目的でボツリヌストキシンを用いた治療を行いその効果と持続性について検討したので報告する。
【方法】2019年1月から2023年12月までに顔面神経麻痺後遺症に対してボツリヌストキシンによる治療を行った症例を対象とし、診療録と臨床写真を用いて後ろ向きに調査を行った。投与部位は患側、健側を問わず顔面、頚部の安静時、運動時に左右差を認める表情筋等で、それぞれ1か所あたり0.25~6単位投与した。投与後は患者に表情筋ストレッチと、ミラーバイオフィードバック訓練によるリハビリテーションを指導した。治療効果と持続性を投与前、2週後、3ヶ月後の臨床写真をもとに評価した。
【結果】24例に対しのべ93回治療の治療を行った。1回あたりのボツリヌストキシン投与量は平均15.3単位であった。全例で顔面のこわばり、静的および動的な非対称、病的共同運動の改善を認めた。ワニの涙現象を認めた1例では涙腺への投与により流涙が消失した。顔面の対称性を評価するSunnybrookスコアは治療前70.7点、治療後87.3点と有意に改善を認めた(p<0.01)。

効果の持続性については拘縮の指標として安静時の瞼裂縦径を、病的共同運動の指標として運動時の瞼裂縦径を設定し統計学的に検討した。安静時の瞼裂縦径(健側との比)は治療前0.95、2週後1.03、3か月後0.97であり、拘縮については3か月で治療前の状態に戻っていた。一方、運動時の瞼裂縦径は治療前0.67、2週後0.93、3か月後0.75と治療後3か月を経過しても治療前に比し有意差を認め(p<0.05)、病的共同運動に関しては治療効果が3か月以上にわたり持続することが明らかとなった。

【考察】ボツリヌストキシンによるtotal facial balancingは低侵襲で顔面神経麻痺後遺症患者のQOL改善に有効な治療法と考えられた。
