もっとも良い
「目の下のくまをとる方法」
3つの目の下のくま
《目の下のくま》には3つのタイプがあります。
1.茶くま
2.青くま
3.影くま(黒くま)
このうち、手術でとることのできるくまは 《影くま(黒くま)》 のみです。目の下の影くま取りは 《下眼瞼形成術(LOWER LID BLEPHAROPLASTY)》 と呼ばれ、20世紀後半からさまざまな方法で行われてきました。また最近ではあたらしい技術による切らない影くま治療も選べるようになっています。
影くま治療の歴史と、もっともよい 《くまを取る方法の選び方》 について説明します。
創生期
1970年代に最初のくま取り手術がおこなわれました。その方法はシンプルに 「目の下を切開して皮膚や脂肪をとりのぞくだけ」 というものでした。しばらくすると効果がそれほどつづかないことがわかってきました。
また脂肪をとりすぎると 「目の下がくぼんでやつれたようになってしまう」 ことや、皮膚をとりすぎると目の形が変わってしまったり、下まぶたの外反(あかんべえの状態で戻らない)などがおこるといった問題も出てきました。
Loeb法
1980年代になると皮膚や脂肪だけをとる方法の欠点をおぎなうため、目の下のハの字のシワや半円形のくぼみ 《tear trough(=なみだの溝)》 のところに脂肪を移動させてフラットにするという新しいアプローチが試みられました。
この方法は、Dr. Loebがはじめに発表したものですが、有名な美容外科医であるDr. Hamra(ハムラ)にちなんで日本では 《ハムラ法》 と呼ばれています。また、同じ手術を最近は 《眼窩脂肪移動術》《脂肪再配置》ということもあります 。
具体的な手技についてもDr. Loebはたいへん詳しく、わかりやすいstep-by-stepのイラストとともに今でも色あせないコンセプトを提案しています。1981, Loeb R. Clin Plast Surg. 8 より引用
“皮膚を”切らない術式
2000年前後には多くの形成外科医が皮膚を切らずにくまをとる術式を発表しました。それまでは下まつげのキワを切開していたところを、まぶた裏の 《結膜》 を切開しても同じようなくま取り手術ができることがわかってきたためです。
皮膚を切らないため傷が目立たないだけでなく、ダウンタイムが短い、外反(あかんべえの状態)などの合併症を少なくできる、など多くのメリットがありました。今では多くの形成外科医がこのアプローチを採用しています。皮膚を切らない術式には大きく分けると脂肪をとる 《脱脂》 と、リガメントを外して脂肪を移動させる 《裏ハムラ(下図)》 があります。また、それぞれ治療のオプションとして 《脂肪注入》 があります。
これまでの多くの研究結果から、目の下のハの字のシワ部分にある靱帯《リガメント》 を外すことが目の下をフラットにするための最大のポイントと考えられています。いまではこのリガメントの位置や形についても詳しくわかってきています。
2017, Wong CH. Plast Reconstr Surg. 140 より引用
《顔のクリニック金沢》 では米国UCLAでDr.Kawamotoからリガメントを外して脂肪を移動させる 《経結膜下眼瞼形成術(=裏ハムラ)》 をまなび、これを応用して治療をおこなっています。Dr.Kawamotoは決して広くはない結膜切開から素早く確実に脂肪を固定するため皮膚に糸を引っかける方法をとっていましたが、ときに一時的ではありますが、えくぼのようなくぼみが目立ってしまうことがありました。
2003, Kawamoto HK. Plast Reconstr Surg. 112 より引用
現在は手術用ヘッドライトやルーペを使うことで結膜切開のせまい術野でも縫合するところをしっかりと見ることができます。また、マイクロサージャリー用の繊細な器具をつかうことで皮膚に糸をかけなくても正確に内部で脂肪を固定することができるようになり、ダウンタイムのさらなる軽減につながっています。
【症例】下眼瞼形成術(経結膜法)
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
※合併症やリスク:薬剤のアレルギー、出血、感染・異物反応、結膜充血、結膜浮腫、眼瞼内反、眼瞼外反、複視
※費用(自由診療)
※厚生労働省のガイドラインに準拠し費用、合併症等を記載したうえで、術前・術後の写真を掲載しています。
本当に切らないくま治療
結膜を切開する手術のことを皮膚を切らないという意味で 「切らない治療」 と称していることもあるのですが、結膜すら切らない本当の切らない影くま治療というのもいまでは可能になっています。
いちばん手軽なのは注射治療です。《ヒアルロン酸》 を注入して軽いくまを目立たなくすることができます。腫れなどのダウンタイムが短いかほとんどないこと、変化がマイルドなため治療を受けたことが他の人にわかりにくいのが最大のメリットです。ヒアルロン酸だけで完全にくまを消すことは難しく、無理をすると逆に不自然になってしまうこともありますので担当医とよく相談して治療を受けられることをおすすめします。ヒアルロン酸の持続は半年〜数年です。
機械を使った影くま治療は、肌のハリを改善することでくまを目立たなくする効果が期待されますが、当然効果は手術やヒアルロン酸治療におよびません。どうしても手術や注射はしたくないという場合に限られた選択肢となります。皮膚をターゲットにしたラジオ波治療 《RF》 と、超音波治療 《HIFU(ハイフ)》 があります。米国 《FDA》 が認めた機種はRFの 《サーマクール》 、HIFUの 《ウルセラ(下の写真)》 のみです。いずれもダウンタイムがほとんどなくすぐにメイクできることが最大のメリットです。
このほかに、トリクロロ酢酸などをつかったピーリング、レーザー治療、トレチノイン治療などの肌の弾力を回復する治療にもくまを目立たなくする効果が期待できます。このようなお肌のハリ改善治療については一度で目に見えた効果を得ることはむずかしく、また完全にくまを消すこともできませんが、続けていくことで多少の改善効果は期待できます。
もっとも良い目の下のくまをとる方法
それぞれに長所短所があり、人によって求める効果や受け入れられるダウンタイムはちがうため 《もっとも良い方法》 を一つに決めることはできません。それぞれの特徴をよく理解したうえで、たくさんの方法からぜひご自身に合う方法を選んでください。
クリニックで相談するときのポイントは、したいこと、したくないことをはっきりと担当医に伝えることです。治療法についての提案を受けたら、それぞれの治療法についてダウンタイム、効果、持続期間、費用などをよく確認してください。自然で元気に若々しく見える目もとを取り戻し喜んでいただくために、あなたにとって《もっとも良い方法》をお選びください。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039 (クリニック予約)
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m. 木曜日、日曜日を除く
執筆
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
経歴:
岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師
形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師