目の下のくまやふくらみの原因と治療
目の下のくま、ふくらみ、たるみは別名《バギーアイ(baggy eyelid)》や《目袋》とよばれ、やつれた感じ、疲れて見えるなどの理由で相談に来られることの多い目元の悩みです。
バギーアイの原因と治療、自分に合った治療の選び方について解説します。
目次
・バギーアイの原因
・バギーアイの治療
・切らない治療
・手術による治療
・自分にあった治療法の選び方
・バギーアイの原因
原因の1つ目は、うまれつきふくらみが目立ちやすい顔立ちであること。アジア人はもともと骨格が前方に張り出していないため、目の下のふくらみがでやすいといわれています。それに加えて眼球のまわりにあってクッションになっている《眼窩脂肪》がうまれつき多いとふくらみが目立ちやすくなります。《眼窩脂肪》は太ったりやせたりしても大きく変化しにくく、若いうちからふくらみが目立つ場合はこの脂肪が原因と考えられます。
2つ目は年齢による変化です。年齢とともに《眼窩脂肪》をささえている靱帯などがゆるんでくることことや、頬の脂肪がたるんで下がることによりふくらみが目立つタイプです。お肌のたるみが加わるとふくらみをさらに目立たせてしまう原因に。
原因によって対処法はちがってくるので、まずは自分がどのタイプかを見きわめることが自分に合った治療につながります。
ふくらみの下には涙のながれる溝という意味の《tear trough(ティアトラフ) 》といわれるくぼみがあります。ふくらみをこのくぼみが縁取ることでさらにくまが目立つ原因となっています。
あまり多くはありませんが、ふくらみがほとんどなく、《tear trough(ティアトラフ)》だけが目立つことがあります。《tear trough deformity(ティアトラフ変形)》とよばれるタイプのくまです。ではこの溝部分には何があるのでしょうか。
この溝部分には《ティアトラフ靱帯》という硬いスジ状の組織があります。この靱帯が皮膚を骨に固定しているため、生まれつきふくらみが大きかったり、年齢によりふくらみが大きくなったり、もともと食い込むような形になっていると目の下のくまが目立つということになります。
【関連コラム】目の下のくまセルフチェック
・バギーアイの治療
バギーアイを改善させるクマ取り治療には大きく分けて2つの選択肢があります。
●切らない施術
①ヒアルロン酸注入
②レーザー
③ピーリング
④HIFU
●手術による治療
①ふくらみ部分の脂肪をとりのぞく《脱脂》
②脂肪を移動させてフラットにならす《ハムラ法》
③皮膚を切らずに脂肪を移動させる《裏ハムラ》
④【オプション】たりないボリュームをおぎなう《脂肪注入》
顔のクリニック金沢は目の下のくま・ふくらみを専門医が診断し、切らない施術から手術まですべての治療が受けられる日本でも数少ない顔専門の美容外科クリニックです。
・切らないクマ取り施術
①ヒアルロン酸注入
くぼみの周囲にジェル状のヒアルロン酸を注入してくまを目立たなくします。多少ふくらみやくまがのこる程度にとどめ、やりすぎないのが自然にみえるための最大のポイントです。
ヒアルロン酸は通常1本あたり1mlの製剤が多いため、目の下だけでは余りがでてしまうことも。ご希望に応じて残ったヒアルロン酸を使える唇や目の上などの治療もご提案しています。
【関連コラム】目の下のくま、ふくらみー切らない治療
②レーザー
リフトアップレーザーやフラクショナルレーザーなど、お肌のハリをとりもどす施術です。1回では効果が出にくいためくり返し受ける必要があります。また、くり返しうけたとしても効果はヒアルロン酸や手術にはおよびません。注射や手術はしたくないという場合の選択肢になります。他の治療をくみあわせて気長に受けることで少しずつ改善が期待できます。
③ピーリング
お肌に刺激をあたえてハリをとりもどす施術です。レーザーと同じように1回では効果が出にくく、またくり返したとしてもヒアルロン酸や手術にはおよびませんが、お肌のハリを回復する《PRX-T33》は美白効果のある《コウジ酸》も配合されお顔全体のハリ・小じわケアに効果的です。
④HIFU
超音波をつかった施術です。お肌の深部に熱を加えることでハリをとりもどします。お肌の表面に効果的なレーザー・ピーリングと組み合わせることで相乗効果が期待できます。
・手術によるクマ取り治療
手術治療には大きく分けると3つの方法と1つのオプションがあります。
①ふくらみ部分の脂肪をとりのぞく《脱脂》
②脂肪を移動させてフラットにならす《ハムラ法》
③皮膚を切らずに脂肪を移動させる《裏ハムラ》
④【オプション】たりないボリュームをおぎなう《脂肪注入》
【関連コラム】目の下のくま、ふくらみー手術
①《脱脂(眼窩脂肪切除術)》
目のまわりのクッションになっている《眼窩脂肪》を適量とることでふくらみを減らします。ほどよく減量することが非常に難しく、ハの字の影《ティアトラフ》は残るため、《ティアトラフ》がなくふくらみだけの場合におすすめしています。
10〜20代で、肌にハリがあって、ハの字の影がなく目の下のふくらみのみの場合におすすめする方法です。
《ティアトラフ》が目立つタイプではヒアルロン酸注入単独もしくは脱脂との併用も可能です。ただし脂肪を取り過ぎると目の下がへこんでやつれて見えるようになってしまうリスクがあるため、ひかえめな切除をおすすめしています。
手術中に体をおこしてふくらみの形を確認しつつ切除量を決めていくことで切除不足、取り過ぎを予防できます。
②《ハムラ法(下眼瞼形成術、経皮法)》
目のまわりにある《眼窩脂肪》をくぼみの部分に移動させて目の下を平らに整える方法で《切開ハムラ》ともよばれます。
ハの字の影《tear trough(ティアトラフ)》のところにある靱帯《ティアトラフリガメント》をリリースすることで影が出なくなり、目の下をフラットにととのえることが可能となります。
皮膚があまってたるんでいるようであれば、皮膚を切開する《下眼瞼形成術(経皮法)》をおすすめします。手術のあとしばらくは目の下の傷あとが赤くみえますが半年もすると目立たなくなります。
③《裏ハムラ(下眼瞼形成術、経結膜法)》
お肌にハリがあって、皮膚そのもののたるみがあまりないようなら、皮膚を切らずにまぶたの裏側からおこなう《裏ハムラ》をおすすめします。
まぶたの裏側の《結膜》を切開して《ティアトラフリリース》をおこなったうえで、くぼみの部分に脂肪を移動させる手術です。皮膚に傷ができないためダウンタイムが短く回復が早いのがメリットです。
移動させた脂肪をとめる糸は頬の皮膚表面に固定されることが多いのですが《顔のクリニック金沢》では《特注の縫合糸》や《マイクロサージャリー用の特殊な機器》を使用して術後に糸が肌の表面には出ないよう内部で縫合することで極力ダウンタイムを短縮しています。
【関連コラム】【症例】目の下のくま取り(裏ハムラ)とダウンタイムについて
④【オプション】《脂肪注入(脂肪移植術)》
目のまわりにボリュームを足すことでくまの影を目立たなくする方法です。ポイントはハの字の影部分だけでなく頬のふくらみにも十分に注入することです。ハの字の部分だけに注入すると笑ったときなどにポコッと浮き出て見える原因になり、修正が非常に難しくなるためです。
脂肪注入はもともと頬のまるみがほとんどないタイプや、頬の《ゴルゴ線》が目立つタイプのくまには併用をおすすめしています。目の下から頬の形をさらに美しく整えるための《脱脂》《ハムラ法》《裏ハムラ》のオプションです。
※目の下のくまと同時にひたい、こめかみ、頬のこけ、ほうれい線、マリオネットラインなどへの脂肪注入も可能です。
自分に合った治療法の選び方
自分にあった治療法を選ぶときにポイントになることは2つです。
・信頼できる担当医を選ぶこと(形成外科専門医、JSAPS美容外科専門医など)
・自分のなかでゆずれない条件を決めておくこと(方法、費用、切りたくないなど)
まずは担当医としっかり相談して納得して治療をお受けください。迷っている場合は一旦持ち帰ってよく検討したうえで治療を選ばれることをおすすめします。
【関連コラム】もっとも良い「目の下のくまをとる方法」
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039 (クリニック予約)
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m. 木曜日、日曜日を除く
執筆
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
経歴:
岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師
形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師
【症例】目の下のくま取り(裏ハムラ)とダウンタイムについて
【目の下のくま取り(裏ハムラ)とは】
目の下のくま取り手術、《下眼瞼形成術》とは目の下の形態を整える手術です。ふくらみやくぼみをフラットにならし、くまの影を目立たなくすることができ、目の下を自然に美しく整えます。
結膜の切開から脂肪を移動させる《下眼瞼形成術(裏ハムラ)》は《脂肪再配置》ともよばれ、皮膚を切開しないため腫れや傷あとなどの回復期間(ダウンタイム)が短いこと、合併症が少ないことから多くの形成外科医が採用しています。
【治療の流れ】
①まぶた裏の粘膜を切開します。
②目の下のくぼみ《tear trough(涙のミゾ)》部分にあるリガメントをはずします。
③目のまわりの《眼窩脂肪》をミゾのあった部分に移動させ糸で固定します。
③結膜を溶ける糸で縫合します。
【治療のポイント】
2017, Wong CH. Plast Reconstr Surg. 140 より引用
この手術の最大のポイントは皮膚のひっかかりになっているリガメントを確実にはずす《ティアトラフリリース》をおこなうことです。4時方向から8時方向までの範囲でリガメントを外すことで目の下のハの字の影ができなくなり、目の下の凹凸がなくなります。
《ティアトラフリリース》が不十分になってしまうと、くまの影が残ってしまう原因に。顔のクリニック金沢ではまぶたの裏の小さな切開から確実にリリースするために《高周波メス》をつかったリリース法を採用しています。高周波メスによるリリースは局部麻酔のみでは痛みを感じてしまうことが多いため、全身麻酔での施術をおすすめしています。全身麻酔には痛みによる血圧上昇をおさえることで腫れや内出血を少なくするメリットもあります。
【顔のクリニック金沢でおこなう目の下のくま取り(裏ハムラ)について】
・手術はすべて裏側の結膜切開からおこなうため、皮膚に傷はできません。
・脂肪の固定も裏側の切開からおこなう《内固定法》のため、直後に皮膚から糸が出ていたりすることもありません。
・結膜の縫合糸には溶けて吸収される糸(8−0バイクリル)を使うため抜糸の必要はありませんが、糸が気になる場合には抜糸することも可能です。(結膜を縫合しない方法もありますが、縫合しないことで出血しやすい場合があるため特にご希望がなければ結膜を縫合をしています。)
・手術時間は90〜120分です。
・麻酔科専門医が担当する日帰り全身麻酔で痛みなく受けることができます。痛みや血圧をコントロールすることで腫れや内出血を最小限におさえます。
・術後の腫れやむくみを予防するため夜は枕を高めにしてお休みください。また、決められた期間お渡しする点眼薬を使用してください。
・目の下にテーピングを行いますので、2〜3日目にはがしてください。
・術後2週間は激しい運動や目の下の圧迫、強いマッサージを避けてください。
※アフターケアに必要な内服薬・点眼薬、目もとを冷やすための保冷剤、注意事項の説明用紙などをお渡しします(すべて手術費用に含まれます)。
【ダウンタイムについて】
症例:40代女性(術前→直後→翌日)
・腫れのピークは術後24〜48時間、腫れの程度には個人差があります。
・1〜2週で目立たない程度まで腫れが改善します。
・完全に腫れがひいて手術の結果がわかるのは術後1〜3か月目です。
・当日から洗顔や短時間のシャワーは可能です。テーピングをはずしたあとは目の下もスキンケア、メイクができますが強く押したりこすったりしないように注意してください。
ダウンタイムを軽減するために
顔のクリニック金沢ではさらなるダウンタイム軽減のためにさまざまな取り組みを行っています。
①皮膚に糸を出さない「内固定法」
②切開と止血が同時におこなえる「高周波メス」
③痛みをなくし、血圧を安定させる「全静脈麻酔(TIVA)」
④腫れを予防する「止血剤」
⑤術後の「テーピング」(2~3日)
【Q&A】
Q:コンタクトレンズはいつからつけられますか?
A:基本的には術後1か月あけて使っていただいています。どうしても早くコンタクトを使いたい場合にはご相談ください。結膜側の抜糸をすることで少しはやくコンタクトを使っていただくことができます。
Q:テーピングはいつまでですか?
A:帰宅前に目の下に肌色の目立たないテープをはります。期間は2,3日を目安に自然に浮いてはがれてきたら終了です。一旦はがれたあとはご自身で貼る必要はありません。
Q:脂肪注入はあとからでもできますか?
A:脂肪注入を同時にうけるか迷っているのであればまずは裏ハムラだけ受けられて変化をみていただき、必要ならあとから脂肪注入をすることが可能です。2回に分けることのデメリットは、手術が2回になるためそれぞれにダウンタイムの期間があることと、麻酔や検査の費用が2回分必要になることです。
Q:脂肪注入は定着しなかったりしこりになるリスクがあると聞きましたが大丈夫ですか?
A:脂肪の採取、加工、注入の方法によっては定着率が低くなったりしこりになることもありえます。また、ハの字のミゾ部分のみに脂肪を注入するとその部分が笑ったときにポコッとふくれて見えてしまうことがあり、そうなると修正が難しいため注入する範囲にも配慮が必要です。いずれにしても経験豊富な執刀医を選ばれることをおすすめします。
《形成外科専門医資格》は基本的な手術手技をマスターしているというひとつの目安になります。
《JSAPS美容外科専門医》は美容外科手術を一定の症例数行った経験の目安になります。ご参考になれば幸いです。
Q:裏ハムラのときでも脂肪はとりますか?
A:脂肪はできるだけ温存します。ただし、ぽっこり感が残るようなときは必要最小限に切除します。前後の長さが短いアジア人の骨格では多少は切除しないと目の下のふくらみが残りやすいといわれています。
Q:裏ハムラまでしなくても脱脂だけで十分ではないのでしょうか?
A:脱脂だけでもふくらみは改善しますが、ハの字のシワ(tear trough)が残ります。日によってふくれて見えたり、ハの字のくまが出たり、ということもありえます。また、肌の弾力が低下している中年期以降は脱脂しすぎると目の下がくぼんでやつれて見えてしまうこともあるため取り過ぎには注意が必要です。治療のゴールをどこにもっていくかによって方針は変わってきますので、主治医とよくご相談ください。
Q:裏ハムラで移動させた脂肪はどこに縫い付けますか?
A:内側は《上唇鼻翼挙筋》という筋肉の端に縫い付けます。内側のミゾが残るととくに目立つため、しっかりと脂肪を移動させて確実に固定する必要があります。それ以外の部分は目の下の骨膜や脂肪組織に縫い付けます。当院では基本的に皮膚側に糸を出さずに内部での縫合のみを行っているため、手術直後に頬から糸が出ている状態になることはありません。
Q:裏ハムラのあと目の下をさわるとしこりのようなものがあり心配です。
A:脂肪を縫い付けたところがしこりのようにふれることがあります。見た目がデコボコしていなければ様子をみてください。ふつうは数ヶ月から半年でしこりを触れなくなります。見た目にもデコボコしてみえるようであれば主治医にご相談ください。
Q:裏ハムラの適応年齢は決まっていますか?
A:年齢によって適応を決めることはありません。肌の状態や骨格、希望される治療のゴールによって適応が決まります。
Q:リガメントを処理する本格的な裏ハムラとそうでない裏ハムラの違いは何ですか?
A:たとえば(裏側からの脱脂)+(脱脂した脂肪の移植)などの術式を便宜上《裏ハムラ》と称している場合もあります。本格的なハムラ法ともっともちがう点は手術に要する時間です。リガメントをリリースして脂肪を移動させるためには、なれている術者でも1時間以上はかかります。また、局所麻酔であれば目頭側のリガメントを切り離すときに痛み止めが効きづらいところがあるため少なからず痛みを感じます(図の赤い部分、眼輪筋という筋肉があるため痛みを感じやすい)。痛みなく手術を受けていただけるよう、当院では全身麻酔で治療をおこなっています。
【症例1】30代女性
《下眼瞼形成術(裏ハムラ)》(上:術前、下:術後半年)
ダウンタイム
上【術前】
中【術後1週間】
下【術後1カ月】
1週目はまだすこしむくみがあり、涙袋がぼやけてみえますが、1か月目にはむくみがとれて涙袋がくっきりとしています。むくみが目立つのは1週間程度、完全に落ち着くのは1〜3か月です。
※内出血がみられた場合は2週間ほどかかります。
※手術前から涙袋がある場合の経過です。もともと涙袋がまったくない場合、涙袋ができることはありません。
【症例2】40代女性
《下眼瞼形成術(裏ハムラ)》(上:術前、下:術後半年)
【症例3】30代女性
《下眼瞼形成術(裏ハムラ)》(上:術前、下:術後半年)
ダウンタイム
術前→2日目→1か月目
【症例4】50代女性
《下眼瞼形成術(裏ハムラ)+脂肪注入(目の下、頬など)》(上:術前、下:術後半年)
【担当医について】
上記の症例を担当した外科医、麻酔科医はともに十分な経験と知識を有するエキスパートにのみ与えられる日本専門医機構および各学会の専門医です。
《外科医》 山下明子
日本形成外科学会専門医
日本美容外科学会(JSAPS)専門医
《麻酔科医》 日高康治
日本麻酔科学会専門医
※合併症やリスク:薬剤のアレルギー、出血、感染・異物反応、結膜充血、結膜浮腫、眼瞼内反、眼瞼外反、複視
※費用(自由診療)
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m.
※費用はすべて消費税込みで表示しています。
※厚生労働省のガイドラインに準拠して治療の詳しい内容、費用、合併症等を記載したうえで、術前・術後の写真を掲載しています。
執筆
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
経歴:
岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師
形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師
もっとも良い
「目の下のくまをとる方法」
【3つの目の下のくま】
「目の下のくま」には3つのタイプがあります。
1.茶くま
2.青くま
3.影くま(黒くま)
このうち、手術でとることのできるくまは 「影くま(黒くま)」のみです。目の下の影くま取りは 「下眼瞼形成術(LOWER LID BLEPHAROPLASTY)」 と呼ばれ、20世紀後半からさまざまな方法で行われてきました。また最近ではあたらしい技術による切らない影くま治療も選べるようになっています。
影くまのタイプ、影くま治療の歴史と、もっともよい 「くまを取る方法の選び方」 について説明します。
【影くまのタイプチェック】
影くま(黒くま)にもいくつかのタイプがあります。A,B,Cのうちチェックが最も多かったものがあなたのタイプと考えられます。
A:ふくらみくまタイプ
□もともとはあまり気になっていなかったが最近目の下がふくれてきた
□ふくらみはそれほど大きくない
□上をむくとくまが目立たなくなる
□夕方になるとくまが気にならなくなる
B:バギーアイタイプ
□前からすこしくまがあったが徐々にふくらみが大きくなってきた
□ふくらみの下がくぼんでいる
□上を向いてもクマがある
□小じわが気になる
C:ティアトラフタイプ
□10代、20代からくまが目立っていた
□目の下にハの字の影がくっきりと目立つ
□青紫~赤紫がかった色が目立つ
□自分と同じタイプのクマの症例が少ないと感じる
【影くま治療の歴史といろいろな術式】
眼窩脂肪の切除
1970年代に最初のくま取り手術がおこなわれました。その方法はシンプルに 「目の下を切開して皮膚や脂肪をとりのぞくだけ」 というものでした。
効果の持続は5年程度といわれており、時間とともにふくらみが目立ってくることがあります。
また脂肪をとりすぎると 「目の下がくぼんでやつれたようになってしまう」 例があることや、皮膚をとりすぎると目の形が変わってしまったり、下まぶたの外反(あかんべえの状態で戻らない)などがおこるといった問題も出てきました。
このため現在では皮膚を切開して脂肪や皮膚を取り除く方法はあまり行われていません。
Loebの術式(ハムラ法)
1980年代になると皮膚や脂肪だけをとる方法の欠点をおぎなうため、目の下のハの字のシワや半円形のくぼみ 《tear trough(=なみだの溝)》 のところに脂肪を移動させてフラットにするという新しいアプローチが試みられました。
この方法は、Dr. Loebがはじめに発表したものですが、有名な美容外科医であるDr. Hamra(ハムラ)にちなんで日本では 「ハムラ法」と呼ばれています。また、同じ手術を最近は 「眼窩脂肪移動術」「脂肪再配置」ということもあります 。
具体的な手技についてもDr. Loebはたいへん詳しく、わかりやすいstep-by-stepのイラストとともに今でも色あせないコンセプトを提案しています。
「B:バギーアイタイプ」のうち50代以降でふくらみが大きく皮膚のたるみがある例では現在でもとても効果的な方法です。1981, Loeb R. Clin Plast Surg. 8 より引用
“皮膚を”切らない術式
2000年前後には多くの形成外科医が皮膚を切らずにくまをとる術式を発表しました。それまでは下まつげのキワを切開していたところを、まぶた裏の 「結膜」 を切開しても同じようなくま取り手術ができることがわかってきたためです。
傷が目立たないだけでなく、ダウンタイムが短い、外反(あかんべえの状態)などの合併症を少なくできる、など多くのメリットがあります。今では多くの形成外科医がこのアプローチを採用しています。皮膚を切らない術式には大きく分けると脂肪をとるだけの「脱脂」と、リガメントを外して脂肪を移動させる「裏ハムラ(下図)」 があります。
脂肪をとるだけの「脱脂」は「A:ふくらみくまタイプ」に効果的な方法です。
リガメントを外して脂肪を移動させる「裏ハムラ」は「B:バギーアイタイプ、C:ティアトラフタイプ」のうち皮膚のたるみが少ない40代までに効果的な方法です。
また、それぞれ治療のオプションとして 「脂肪注入」 があります。
これまでの多くの研究結果から、目の下のハの字のシワ部分にあるスジ状の組織「リガメント」 を外すことが目の下をフラットにするための最大のポイントと考えられています。いまではこのリガメントの位置や形についても詳しくわかってきています。
2017, Wong CH. Plast Reconstr Surg. 140 より引用
【症例】「顔のクリニック金沢」の裏ハムラ
「顔のクリニック金沢」では米国UCLAでDr.Kawamotoからリガメントを外して脂肪を移動させる 「経結膜下眼瞼形成術(=裏ハムラ)」 をまなび、これを応用して治療をおこなっています。Dr.Kawamotoは決して広くはない結膜切開から素早く確実に脂肪を固定するため頬の皮膚に糸を引っかける方法をとっていましたが、ときに一時的ではありますが、えくぼのようなくぼみが目立ってしまうことがありました。
2003, Kawamoto HK. Plast Reconstr Surg. 112 より引用
現在では手術用ヘッドライトやルーペを使うことで結膜切開のせまい術野でも縫合するところをしっかりと見ることができます。また、マイクロサージャリー用の繊細な器具をつかうことで皮膚に糸をかけなくても正確に内部で脂肪を固定することができるようになり、ダウンタイムのさらなる軽減につながっています。
【症例】下眼瞼形成術(経結膜法)
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
上:術前、中:1週間後、下:術後1か月
※合併症やリスク:薬剤のアレルギー、出血、感染・異物反応、結膜充血、結膜浮腫、眼瞼内反、眼瞼外反、複視
※費用(自由診療)
※厚生労働省のガイドラインに準拠し費用、合併症等を記載したうえで、術前・術後の写真を掲載しています。
【本当に切らないくま治療】
結膜を切開する手術のことを皮膚を切らないという意味で 「切らない治療」 と称していることもあるのですが、結膜すら切らない本当の切らない影くま治療というのもいまでは可能になっています。どのタイプでも症状が軽いうちは切らない治療での改善が期待できます。
いちばん手軽なのは注射治療です。《ヒアルロン酸》 を注入して軽いくまを目立たなくすることができます。腫れなどのダウンタイムが短いかほとんどないこと、変化がマイルドなため治療を受けたことが他の人にわかりにくいのが最大のメリットです。ヒアルロン酸だけで完全にくまを消すことは難しく、無理をすると逆に不自然になってしまうこともありますので担当医とよく相談して治療を受けられることをおすすめします。ヒアルロン酸の持続は半年〜数年です。
機械を使った影くま治療は、肌のハリを改善することでくまを目立たなくする効果が期待されます。当然効果は手術やヒアルロン酸治療におよびませんので、どうしても手術や注射はしたくないという場合に限られた選択肢となります。皮膚をターゲットにしたラジオ波治療 「RF」 と、超音波治療 「HIFU(ハイフ)」 があります。米国 FDA が認めた機種はRFの「サーマクール》 HIFUの 「ウルセラ(下画像)」 のみです。いずれもダウンタイムがほとんどなくすぐにメイクできることが最大のメリットです。
このほかに、トリクロロ酢酸などをつかったピーリング、レーザー治療、トレチノイン治療などの肌の弾力を回復する治療にもくまを目立たなくする効果が期待できます。このようなお肌のハリ改善治療については1回の施術ではっきりとした効果を得ることはむずかしく、また完全にくまを消すこともできませんが、続けていくことで多少の改善効果は期待できます。
【もっとも良い目の下のくまをとる方法】
それぞれの方法に長所短所があり、人によって求める効果や受け入れられるダウンタイムはちがうため「もっとも良い方法」を一つに決めることはできません。それぞれの特徴をよく理解したうえで、たくさんの方法からぜひご自身に合う方法を選んでください。
クリニックで相談するときのポイントは、したいこと、したくないことをはっきりと担当医に伝えることです。治療法についての提案を受けたら、それぞれの治療法についてダウンタイム、効果、持続期間、費用などをよく確認してください。自然で元気に若々しく見える目もとを取り戻し喜んでいただくために、あなたにとって「もっとも良い方法」をお選びください。
お問い合わせ・ご予約
TEL 076-239-0039 (クリニック予約)
10:00 a.m. ~ 18:00 p.m. 木曜日、日曜日を除く
執筆
山下 明子 医師
YAMASHITA, Akiko
顔のクリニック金沢 院長
経歴:
岐阜県出身
平成15年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業
同年 金沢医科大学形成外科入局
平成18年 産業医科大学形成外科留学
平成26年 金沢大学皮膚科形成外科診療班
平成29年 顔のクリニック金沢専任医師
形成外科 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 専門医
金沢医科大学形成外科学 非常勤講師
2023.8.25執筆
2024.3.29加筆